「あの夏の日」
いつものようにネットでニュースをチェックしていて、『「青春18きっぷ」のオススメプラン+裏ワザ!(R25) - goo ニュース』という記事を目にしました。
「青春18きっぷ」と「裏ワザ」というキーワードを見ただけで、24年前にワープ。鮮やかにあの夏が広がりました。
30歳の夏です。
春、それまでいたある組織を飛び出しました。学生時代から10年間青春のすべてをかけた組織から離れたのです。ほとんど何も持たずに出ましたので、そのまま貧乏生活に突入。それでも、もう組織はまっぴら、マネジメントなしで、自分のアイデアを形にしたいという思いが強かったので、就職はせず、安いアパートを借りて、個人の企画事務所をはじめました。
ちょうど、富士通の個人向けワープロ「オアシスlite」が発売になった年でもあったので、丸井のクレジット(まだ月賦といっていたと思います)で購入。それで企画書を書きまくり、ネーミングを考え、コピーを作る。そういうことを必死にやり、なんとか、かんとかやってやっていました。少し出来たお金で故郷である鹿児島に帰るために購入したのが「青春18きっぷ」でした。それまで心配をさせてきた両親への謝罪の旅でもあったのです。
夜10時53分東京駅発大垣行きの夜行の普通電車に乗ります。「青春18きっぷ」は5枚つづりで一日が1 枚。当時いくらだったか忘れましたが、小田原あたりまで普通の乗車券を買います。その方が一枚の料金よりも安いわけです。実は1982年の「青春のびのびきっぷ」で発売され翌83年に「青春18きっぷ」に名称変更、1984年、つまり私が旅をしたまさにその夏に10000円一日券5枚つづりという形になったようです。
今は「ムーンライトながら」という立派な名称がありますが、当時は列車に名前はなく、普通電車でした。現在、全席指定なのですが、その頃は、自由席。かなり混みますので、早めに東京駅に駆けつけました。そして、なんと、liteとはいえ決して小さくも軽くもないオアシス liteを持って旅行したのです。休んでいたら、すぐに干上がってしまう経済状況で、休暇とはいえ、仕事をしなければならないという事情を抱えていました。
この電車に乗ると朝早く岐阜県の大垣に着きます。そこで朝食、そのまま、通勤快速に乗って京都へ、さらに快速電車を乗り継いで明石あたりまで一気にいきます。
将来構想をいろいろと練りながら、ワープロにまとめる。美しい須磨の海などをみながら、ボーとする。そんな自分の姿が映像として蘇ってきます。この時の、お金もなく心細いながら、新しい出発に何か心を躍らせていた心象風景も同時に思い出されます。
2日目の夜は広島県福山。泊まるところも決めてなかったし、お金も心もとないので、駅でビバーク。石油コンビナートのタンクの塗装をやっているという酔っ払いのおじさんが寄ってきて、夜通しいろいろと話をしました。
大きな石油タンクをロープ一本で上から降りながら塗装を塗っていくそうですが、シンナーにやられて、落下しそうになるという話。その命綱でもあるロープのことを「ボージンジャー」というらしいのですが、それを本当にそう呼ぶのか、酔っ払っていて、さらにシンナーにも犯されているおじさんの発音が悪くて私にはそう聞こえたのか、その後、気になって調べてみたのですが、わかりませんでした。ペンキのついた作業服は、普通の洗剤では落ちないので苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)で洗うというような話も聞きました。なんでも何人もの職人を使っている「親方」なので奥さんがそういうことをやると自慢げに話してくれるのですが、それも果たして今のことなのか、昔のことなのか霧の中。「親方」はこんなところで夜は明かさないだろうと思いつつ聞いていました。川でうなぎを採る話も数時間、そうこうするうち夜が明けました。
この話をいまでも覚えているのは、なぜか、そのおじさんに慰められたのです。人間はどんな状況でも生きていけるというようなメッセージを受け取ったのだと思っています。
徹夜すると、さすがに、電車の中で一日中爆睡。いつの間にか、九州に入り、夜遅く、鹿児島の実家にたどり着きました。その後のことは実はあまり記憶にありません。母が作ってくれた郷土料理の懐かしい味くらいなのです。何を話したのか、果たしてうまく親不幸を謝罪できたのか、覚えていません。
その時、ワープロとともに持ち歩いたのが文庫本と新書。岩波の『折々の歌』と新潮文庫だったかなあ。いまでもそのときに詠んだ俳句を覚えています。
夏しぐれ 旅の枕の 文庫本
ふるさとの 活躍を聞く 旅の空
あれから、24年、あのときの夏の情熱は残っているでしょうか、しばらく自らに問いかけてみます。
[選評]
文章力がある方だと思いますので、少し辛口に批評してみますね。
テーマが「夏の思い出」ということで、
読者がどれくらい、作者の思い出を鮮やかに共有できるかがポイントとなります。
映像なのか、匂いなのか、空気感なのか、ある心情なのか…。
このエッセイを読むと、
時間と空間の扱い方が、やや稚拙であるため、読者に負担を強いている点が残念ですね。
インターネットでは、紙媒体よりも、精読される率は低いので、
常に、読者の読みやすさとか、鮮明な情報伝達を意識しないといけません。
平たく申しますと、よどほ工夫しないと、最後まで読まれることは少ないのです。
もっと簡潔であっても、鮮やかな印象を読者に与える文章を書けるように思います。
30歳の夏に戻り、五感を開放して、感覚的に書くと、
読者はもっと臨場感を楽しむことができるのです。
シンプルな映像や情感を読者と共有しつつ、1つのテーマをどのように伝えるか、
そのあたりが、さらにステップアップするための課題になるでしょう。
これからまだまだ伸びる方だと思いますので、頑張ってほしいものです。
<追記>
実はこの記事が下書きです。
駒込日記:
青春18きっぷの思い出
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